外房捕鯨株式会社

千葉県和田浦の捕鯨会社からのプレスリリースです。

野分のまたの日に

野分のまたの日こそ いみじう あはれに 
をかしけれ   (枕草子より)

 水温の高い紀州沖にて益々発達した台風が9月の日本列島を駆け抜け、大きな被害をもたらしました。当地釧路の街でも野分の大いに打ち振り、釧路川河口付近の繁華街でも冠水の被害があったようです。一方で始まりから好天に恵まれた当地での捕獲調査も小休止。台風の去った「野分のまたの日」は、水泳・散歩・鯖寿司・ショットバーと大いなる気分転換を。釧路入りして以来、最初の休日を楽しみました。

 それにしても、プールでふんわりと浮くことの気持ちのいいこと!軽度のヘルニア由来の左足外側の神経痛に悩まされてきましたが、今回は水泳の効果か、痛みがありません。釧路は夕陽の美しい街。一昨日・昨日と続けて、幣舞橋を越えて米町から弁天浜を散歩しました。夕陽はもう少し秋が深まった頃の方がきれいかなあ。でも雲の出方・形によって、夕暮れの風景は毎夕異なった風情を感じさせ、何とも愉しいものです。水平線付近の残照と凪ぎつつある海を背景に、海底の炭田から石炭を運び出す機関車が走る風景に旅情を感じます。

 米町は釧路発祥の地。明治期には石川啄木が新聞記者として滞在した時期があります。
彼は「しゃも寅料亭」なる料亭に出入りし、小奴なる名妓を知り交情を深めていたらしい。
  
小奴といひし女の
やはらかき
耳朶なども忘れがたかり

 こんなとんでもない歌を残しています。三ケ月にも満たない滞在なのに、米町にはやたらに啄木の歌碑が多い。とんでもないですねえ。
 
 夕刻の米町は人影もまばらです。昨夕は家の中のおばあちゃんから呼び止められました。
以下はその際の会話です。
「あなた、犬でしょう?」
「犬は見ませんでしたよ。」
「白い犬でしょ。私見たよ!」
「いやあ、私は一人の散歩でして」
 例によって早足で懸命に歩いていたから、あわてて犬を捜している様に見えたのかもしれません。大男(僕)の懸命な歩行には鬼気迫るものがあったのかも。そうですねえ、想えば僕自身、夕刻の散歩でセーラー服を着た女子生徒を前方に発見した場合、驚かさない様に、痴漢に間違われない様に、注意して歩いています。

 とまあ、こんな馬鹿なことを書いているうちに、捕獲の報が、、、さあ仕事!仕事!
時化たら、また書きましょう。それでは。

釧路より

 9月2日に和田浦発、仙台―苫小牧フェリーに乗船し、3日夕刻釧路に入りました。当地は涼しく、工場のある荒地にはリンドウが楚々とした紫の花を咲かせています。毎年「残暑よさらば、ざまあみろ!」と捨て台詞を残して旅立ちますが、はい、夏の暑さから解放され、誠に快適であります!

 2日朝、圏央道の稲敷に向かう途中に下総の台地を走りましたが、彼の地の集落は巨木に囲まれ、静寂に支配されていた。「蒸発して、1ケ月くらい、こんな集落で暮らしてみたい。」という願望が発生しました。それにしても、「蒸発」という言葉の少々乾いた語感、なかなかいいものですねえ。子供の頃、「あの家の誰々が蒸発した」ということを、何度か耳にしたことがあります。今思えば、当時多くの人々が浮世のしがらみから逃れる為に、或いはもっと端的に「駆け落ち」といった形で、「蒸発」したのだろう。当時は今程交通網や通信網が発達してなかったし、高度成長期ということで、結構仕事はあった筈。静かに故郷を出ずれば、むろん大変なことは多かったとは思うが、その束縛から逃れて生活出来る広大な社会空間が広がっていたのだと思う。「蒸発」して、人生をリセットし、知らない街でまた人生をやり直す。悪くはないなあ、と思う。尤も「1ケ月の期限付き蒸発」では、不在の間に職場や家庭がどうなっているのかはともかく、帰還後は大いに顰蹙を買って、社会的制裁を受けることは間違いありません。もっと歳をとってから、日々自らの影を薄くして、「いつのまにかいなくなる」=「蒸発」する、というのが良さそうですねえ。まあ、当面は、たまにはひとり旅に出て、徒歩で小さな集落を巡り、旅館で一風呂浴びて、集落の人々が集う居酒屋で一杯やる。そんな形で無聊を慰めたいと思います。秋の釧路での生活は、そんな楽しみはありますね。

 当地でのミンク鯨を対象とした捕獲調査は天候に恵まれ、順調な滑り出しです。一方で釧路入りして以来朝から晩まで忙しく働く生活が続き、大好きな「散歩」をする余裕がありません。今回は坐骨神経痛の症状の緩和の為に、プールで泳ぐ準備もしています。秋が深まれば、天気は周期的に移り変わります。時化れば、散歩したり、プールで泳いだり、馴染みの食堂でうまい飯を食べたりと、静かに愉快過ごしていきたいと思います。それでは。また書きましょう。

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