外房捕鯨株式会社

千葉県和田浦の捕鯨会社からのプレスリリースです。

放射性物質の影響について

 昨日はひさしぶりの大雨。酷暑と節電モードに悩まされてきましたから、この雨が房州の大地にこもった熱を洗い流してくれた様で、少々ほっとしています。

 漁の方も悪天にて一段落。今日は操業当初からの懸案事項であった、放射性物質の問題について書きたいと思います。今まで既に7頭のツチ鯨を捕獲・解体処理し、内2頭について放射性物質の検査を実施しました。捕獲位置は2頭共、和田の沖合海域です。放射性ヨウ素(国の暫定規制値は2000ベクレル以下)、放射性セシウム(同500ベクレル以下)の両方について、不検出ということがその2頭の検査結果でした。(この結果については、日本小型捕鯨協会がデータを入手し次第公表され、水産庁や千葉県庁のホームページに掲載されています。)とりあえずはほっとしましたが、この「不検出」という結果は一定の検査能力をもって検出されなかったということであり、放射性物質が皆無であるということではありません。(尤も放射線は普段でも地球上に存在しているものでもあります。)

 当社は鯨を捕獲し、加工や流通の役割を担ってくれる皆さんのご協力をいただき、地域の皆さんの鯨を食べていただいて、生計を立てている会社です。従い「消費者に安全な美味しい鯨肉を届けること」が当社の役割であり、今回の原発事故による放射性物質の流出の影響については、当社なりに対応可能な努力をし、「安全性」の確保に努めていかねばならない。追って銚子沖の、要するに福島第一原発により近い海域での操業が予定されています。和田沖の2頭が「不検出」の結果であったこと、加えて銚子沖の他の水産物の検査結果では心配する様な結果が出ていないことから、概ね大丈夫であろうと予想しています。しかし念の為、今後も定期的に放射性物質の検査を実施し、その結果を操業海域の選択等に生かしていきたい。そう考えています。

 一方で現在テレビや新聞では、国の放射線や放射性物質の暫定規制値のあり方を巡り、百家争鳴の様相を呈している。この問題は僕自身の仕事にも関係している訳で無関心ではいられない。とりあえず国の示した暫定規制値をベースに仕事をする一方で、本件に関して纏まった情報の得られる特集系のTV番組を観たり、新聞の特集記事に目を通す様にしています。一昨日はBSフジのプライムニュースを観ていました。少々長くなりますが、この問題に関する僕なりの考え方、振る舞い方を書いてみたいと思います。興味のある方はお読み下さい。


一昨日自分なりに整理出来たことを以下箇条書きにしてみます。
(1)外部被爆と内部被爆
 放射能の人体に与える害は、放射線を浴びる外部被爆によるものと、呼吸や飲食によって放射性物質が体内に取り込まれる内部被爆によるもの、の2つがある。

(2)科学データがあるのは、日本の原爆とチェルノブイリの原発事故の外部被爆の影響のみ
 外部被爆の人体に対する影響は、広島と長崎に落とされた原子爆弾の被爆者の事例とチェルノブイリ原発事故の被爆者のそれ、の2事例のデータがある。放射線量の規制値については、これらのデータに基づき設定されている。一方で放射性物質の呼吸や飲食による内部被爆の人体への影響については、データはほぼ皆無と言っていい。要するにこれら2事例の外部被爆のデータが各国の放射線量規制の基準である一方、内部被爆(放射性物質の含有量)については、データは概ね存在しない(わからない)ので、恐らくは各国は何らかの科学的な手法によって類推して食品の規制値等を設定しているものと思われる。

(3)避難命令と食品の出荷・摂取基準
 チェルノブイリ事故以降のソ連政府の採った対応が概ね唯一の参考となる事例である。今回の福島の原発事故の後、日本政府はウクライナに担当官や科学者を派遣し、その方法を徹底的に研究。その成果が応用され、現在の避難命令(外部被爆への対応)や食品の出荷規制(内部被爆への対応)が運用されている。

 上記箇条書きしてみましたが、僕の感覚では既にかなり難解ですね。ただはっきりしていることは、今回の原発事故で我々日本人は科学的に未知なる領域にいる、という事実です。そういった未知なる領域にいることが、現状の百家争鳴状態の原因ではないかと思う。

 一昨夜の番組では農水省と厚生労働省の副大臣が出演していました。彼らの説明は極めて合理的である、と感じました。学校の校庭の除洗をどうするか、農地の使用制限をどうするか、農作物や水産物の出荷をどう規制するか。大変難解な議論であり全て理解出来た訳ではないが、国は限られた事例を参考にして、誤った判断はそれなりに修正して、すべきこと、出来ることをしている。わからないなりに必死で対応している。そんな印象を持ちました。

 一方で専門家と呼ばれる人々のコメントは概して難解な部分が多く、よくわからない。自分の理解力を超えていると感じました。加えて多くの専門家がメデイアを通して自説を披露しているが、それらの多様な自説が一定の方向に収束し、政策決定に建設的な役割を果たす、といった方向に向かっていないのでは、と疑っています。それは論議の対象が「科学的に未知なる領域」であるからではないか。平易に言えば、そもそもよくわからないこと、経験のないことを専門家が自分なりの憶測をもっと議論しているので、まともな結論は期待できない。そう理解するのが妥当だろうと思っています。

 多くの専門家はメデイアを通して自説を述べ、政府を批判します。メデイアの重要な役割は公権力が正しく行使されているかを監視し、問題があれば政府を批判すること。実際に政府の対応は右往左往、これは確かに危機管理能力の欠如と批判することは妥当でしょう。しかし未知なる領域において政策決定が右往左往することはある程度やむを得ない部分もあるのはないかと思います。マスコミは多くの専門家を招聘し、政府の対応を厳しく批判します。故に人々は政府の決定を信用せず、右往左往、ストレスを溜め込む。マスコミが紹介する多数の専門家の自説は一向に収束せず、百家争鳴の状態。人々は益々右往左往し、益々政府の決定を信用しなくなります。一方で農家や漁師は風評被害に怯える。こう考えると、どれが玉でどれが石なのかがわからないメデイア報道は、「百害あって10程度の利しか無い」(敢えて「一利無し」とは言わない)と言えるのではないか。さらに非常に厳しい言い方をすれば、放射線・放射性物質の専門家は脚光を浴び、嬉々としてテレビで自説を披露する。情報を売るマスコミは、公権力監視義務という美名の下、努めてセンセーショナルな報道を続ける。「科学的に未知の領域」の議論が故に、これらの情報が拡散し、人々に不安を与え続ける。しかしながら彼らの経済原則を考えれば、その流れは止めることは難しそうです。

 そんな状況で、即ちあちこちで「危険だ!」「政府の対応は間違っている。」といった花火が無秩序に上がっている状況で、我々はどう生きていけばいいのでしょうか。僕自身は「とりあえず政府の政策を信じよう。右往左往するのは精神衛生上好ましくない。本当にやばいことがあれば、政府は新しい政策を考えるだろう。確かに房州の山河には、通常時より多い放射線が降り注いでいるであろう。それでも引き続きこの房州の山河に抱かれて、その一部として静かに生きていこう。そもそも僕の体はこの山河が育んだものなのだ。」そんな感覚ですね。一方で仕事面では科学的知見・情報を使いながら、出来る範囲で放射性物質の影響の少ない鯨肉を供給する方向で当社なりに努力していこう。人生にも、会社の歴史にもかかる局面はあるものなのだろう。概ねこんな風に考えています。

 最後にかかる現況において頭に浮かんできた漢籍を以下に紹介し、この随分長い作文を終わりにしたいと思います。「漁父の辞」という漢籍です。

 かつて高級官吏であった屈原は放逐されて、顔色はやつれ、皮と骨だけになって川の淵に佇んでいる。そこに漁師が現れ、「あなたは三閭大夫ではありませんか。どうしてこんなことになったのですか?」と聞く。屈原は「世を舉げて皆濁り、自分ひとりだけが清んでいる。衆人は皆酔い、自分ひとりだけが醒めている。だから放逐されたのだ。」と、答える。
漁師は言う。「聖人は物にこだわらず、時流に沿って推し移る。世人が皆濁っているなら、なぜ自分もその泥を濁して濁流をあげないのか。衆人が皆酔っているなら、なぜ自分もその糟を食らって、その汁をすすらないのか。なぜ深く思い高く身を持して、自ら放逐される種を播いたのか。」
屈原は答える。「自分は聞いたことがある、新たに髪を洗うものは必ず冠の塵をはたき、新たに水浴するものは必ず衣のよごれを払うという、どうしてこの潔白な身をもって、汚れたものにまみれることができようぞ。むしろ湘流に赴いて、江魚の腹中に葬らるるとも、この真っ白い身に、世俗の塵埃をこうむることなどどうしてできようか。」と。
漁父はにっこりと笑い、船端を叩いて去り、以下のように歌った。

滄浪の水清まば
以て吾が纓を洗ふべし
滄浪の水濁らば
以て吾が足を洗うべし

(歌の意味)
滄浪の水清まば、我が冠の紐を洗うがよい、滄浪の水濁らば、我が足を洗えばよい

こう歌って漁師は去って再び言葉を交わすことはなかった。


上記漢籍の和訳は、壺齋散人(引地博信)さんのホームページ「漢詩と中国文化」を概ねそのまま引用させていただきました。僕の誤った記憶では「易水の水澄めば我が冠を洗わん。易水の水濁れば我が足を洗わん。」というものでしたが、この言葉を学んでから茫々30余年。それでも時折こんな形で、この言葉が甦ります。最後までお読みいただいた方、本当にお疲れ様でした。ややこしい話でゴメン!以上

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