外房捕鯨株式会社

千葉県和田浦の捕鯨会社からのプレスリリースです。

釧路の憂愁―霧が僕を眠らせるー


夏の漁を終えた後、残暑厳しき日々を重ね、ようやく秋の釧路に辿り着きました。いろいろなことがありましたが、季節は確実に移ろい、その移ろいに合わせ僕は今年も釧路へ移ってきました。当地では時には晩秋を思わせるような冷たい風が吹き、工場に隣接した荒地には釣鐘草が楚々とした薄紫色の花をつけています。夜は深い霧におおわれます。


脱力感の様なものに襲われています。漁がない時は早めに宿に戻りますが、この憂鬱な気分は一体何なのか?このまま眠ってしまいたいと思う。沢木耕太郎の初期の作品に「深夜特急」という旅行記があります。確かその中でネパールのカトマンズのことを書いた「雨が私を眠らせる」という一章があったと記憶しています。カトマンズは神々しいヒマラヤ山脈を背負った古都。そこで欧米のヒッピー達が安価な大麻を吸いながら自堕落な生活を送る様を描いたものでした。故郷を離れた根無し草となり、1日の生活費が宿代も含めて数百円という安い物価、人々の優しい笑顔。そこで彼らは自由を謳歌しながらも、退廃の淵に沈み、ある者は精神的に破綻し、そしてある者は若い命を散らしてゆく。自由というものが本来含有する厳しさ、根無し草となる旅心に付き纏う憂愁、退廃の淵に沈みこんだ者のみが得る一種の免疫のようなもの。かつて放浪の旅に身を置いた僕はそんなことを感じたものです。多分、、、今の僕はこんな憂愁に付き纏われているのでしょう。


 

 このまま眠ってしまいたいと思う。でも今日は歩いてみようか、という気になりました。夕刻駅前の宿より幣舞橋へ向かって歩き始めました。このまま飯を食べて酒を飲むよりも歩く方がいい。幣舞橋の残照の風景に硬直した心が少し解けてきます。


そして昨年何度か歩いた釧路の旧市街へ、米町へ向かって歩きます。この付近は江戸時代初期にアイヌの人々と松前藩の交易がなされ、その後ずっと水産物の大供給地として栄えてきた地区です。今では市の中心は幣舞橋の陸側に移り、すっかりさびれてしまっているけど、僕にとっては昭和40年代の街並み(三丁目の夕日の世界)が残っていてとても懐かしい気分になるのです。ああ、去年会った魚+駄菓子屋のおばちゃんは元気かなあ?去年は街路樹に梯子をかけて魚を干していたけど、もう夕方だから店じまいかなあ。ああ、あの千歳鶴(札幌の酒造メーカー)の巨大な看板はまだあるかしら。そんなことを想いながら歩きます。でもその場所が何処だったか正確なことは覚えておらず、見つかりません。歩いているうちに暗くなってきました。ぼちぼち戻ることにしました。


さて何を食べようか。何だか人恋しい。バーで氷の入ったウイスキーをついで貰うより何か暖かいものを食べさせて貰いたいと思う。温もりが欲しい。山鳥のおばちゃんに荒廃したこころを慰めて貰おうか。山鳥は僕の馴染みのラーメン屋さんで、ラーメンをつくってくれるご主人が人工透析を受ける程大変なのですが、「働ける日は働く」ということで不定期に店を開けます。その心が味に出ていると感じるのです。おばちゃんは「この店の売りは?」なんて言う客が来ると、「そうですね、好き好きですねえ。」と素っ気無いけど、心の温かい人です。ご主人はまず絶対に客と話しません。長年そうしてきたのでしょう。出来れば山鳥に行きたい。多分開いていないだろうが、とりあえず橋を渡り盛り場の末広町に向かうことにしました。


おっとびっくり看板が明るい。開いてる!「おばちゃん、吃驚だよ、今日もやってくれてるの!」「だってあなた、働ける日は働くって言ったでしょう!」と。早速生ビールを。ここでの僕は生ビール2杯を香の物で飲み、最後に塩ラーメンを食べるワンパターンなのです。隣接する所謂風俗店の客引きをしていたCさんが京都に移った話をおばちゃんがします。去年僕はCさんには美味しい餃子屋を教えて貰いました。Cさんは気候・体調に合わせて食べるラーメンを変えていたそうです。例えば寒い日は脂の多い味噌といった風に。だからおばちゃんは誰に聞かれても「好き好きですね。」と言うのだと思います。「おばちゃん、ご馳走様でした。また来るね。」


店を出れば夜霧。霧の中を宿へと戻ります。霧が僕を眠らせる。


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