外房捕鯨株式会社

千葉県和田浦の捕鯨会社からのプレスリリースです。

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受胎告知

  昨日エジプトの政変について書きながら、若き日の中東への旅のことを思い出しました。今想えば、あの旅は「宗教」というものに触れる旅でもあった様に思います。宗教は一義的に人のこころの問題であり、時にはやっかいな国際・国内の紛争に密接に関連している。そんな訳で僕は会話の中で宗教を話題にすることはなかったし、書くこともなかった。でも最近自分自身は日本古来の自然信仰の徒である、といった意識が芽生えた。加えて「論理性と人間性の狭間に生じる矛盾をも包み込む宗教」といった感覚を得、人間に対する情と的確なユーモアをもってすれば、何か書けるのではないか、という気になってきました。「受胎告知」と題して、以下書いてみます。気が向いたらお付き合い下さい。  


 シリア砂漠を横断するバスから残照に輝くパルミュラの遺跡を眺め、僕は大いに感動していた。バスを降りて、行き当たりばったりで宿を見つけ、そこに入った。宿の主人は宗教談義をふっかけてくる。「おまえは何教徒であるか?」と。僕は「仏教徒です。」と答える。当時旅行のガイドブックには「宗教について問われたら、無宗教とは答えないこと」という旅の知恵が書かれており、僕はそれに従った。主人はさらに問う、「仏教の神様は誰だ?」と。「ブッダですかね。」と僕は答える。主人は「ブッダは生きているか?」と問う。僕は「死んでいる。」と答える。主人は「神様は死ぬのか?イスラム神のアラーは不滅である。やはりアラーの方が偉大である。」と。ご説ご尤も、これには反論の余地がなく、談義はこれにて終了。店主は続いて土産物の売り込みを始めた。この出来事は強烈な宗教体験として、こころに残っている。

 当時僕が放浪した地域は、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教といった一神教が生まれ、長い歴史の中で相互に争いながら伝播していった地域である。一神教は論理的には明快だし、特にイスラム教は旧約聖書のモーゼ、新約聖書のキリストをも預言者として位置づけ、最高の預言者であるモハマドが発したという言葉からなるコーランを唯一無二の教義とする体系であって、非常に論理性の高いものを感じる。一方キリスト教は、「イエス キリスト」を全ての人間の原罪を背負って十字架のかけられて死んでいった「神の子」とする。そこから、三位一体説、すなわち「神と、その子であるキリストと、聖霊は、同じ実体(一体)である」という解釈がなされるが、これは論理的には結構しんどいところだ。

一方で有名な「受胎告知」の場面。天使ガブリエルが処女マリアのところに降臨し、聖霊によって神の子イエスを身籠もることを告げる場面で、これはキリストが神の子であることを示す教義的にも重要なもの。イスラム教徒に言わせれば、絶対神に対する冒涜となろう。また一般的な日本人の感覚では「激しい妄想」と感じられるものであろう。しかし、「処女が神の子を宿す」というのは鮮烈にして衝撃的であって、多くの人々が聖書のこの物語に引きつけられたことは間違いないところであろう。やはり宗教は論理ではない様だ。塩野七生さんは「神の代理人」の中で、フィレンツェのメデイチ家出身のローマ法王レオーネ十世をして、以下の通り語らしめている。

 「それ(ドイツの宗教改革者ルター)に比べると、われわれカトリックのほうは陽気だ。生前はさんざんキリスト教の悪口をいっておきながら、死ぬとなると、悟りきった顔で懺悔し、平安になって死んでいくのだから。ところがドイツ人は、それを真正面に受け取ってしまったのさ。真正面に受け取れば、憤慨するしかない。」

 最後に、塩野さんのエッセイから受胎告知絡みの愉快!な逸話をひとつ紹介しましょう。

 イタリアは政争に明け暮れる国。左翼政党が結構強く、社会政策は保守とリベラルの間を揺れ動くお国柄らしい。刑務所の運営ひとつをとっても、保守は「犯罪者の隔離・懲罰の為の施設」と考えるし、リベラルは「人道的観点から犯罪者矯正の為の教育機関」と考える。以下、「知られざる英雄」というエッセイに書かれた、米国高級軍人誘拐事件解決の立役者であるイタリアの刑事のつぶやきです。

 F某(刑事)は、苦笑しながら言う。「また以前のように、逮捕者でも外部に自由に電話をかけられ、男女のテロリストの同房も許すという、人道的な警察に戻りますかね。」いつか女のテロリストの妊娠が話題になったことがある。逮捕時から数えてどうしても月が合わないのに、イタリア人はこう言って笑った。「刑務所の管理に落ち度がなかったというのだから、これはもう、聖霊の仕業と考えるしかない。」

 井上靖さんの詩「受胎告知」の表現を借りて、「戦捷を告げるために到来した軍使のように凛々しく」天使ガブリエルがイタリアの刑務所の独房の女囚の前でひざまずいている風景を想像すると、結構笑えますね。それでは。

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