外房捕鯨株式会社

千葉県和田浦の捕鯨会社からのプレスリリースです。

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捕鯨裁判について

  日曜のTV番組、午後8時以降は参議院選挙速報一色でしたが、その前にNHK等で捕鯨裁判の話題が取り上げられていました。日本のTVの国際紛争に関する報道姿勢は概ね両論併記方式です。これは紛争の実態を限られた時間の中で伝える手法としては合理的です。しかし、一昨日の報道には少々違和感を感じました。今回の裁判は「日本の捕獲調査(調査捕鯨)が国際捕鯨取締条約第8条の科学調査に該当するか否か」が争点。私自身、実は豪州側の主張が余りに稚拙と感じていまして、両論併記に対する違和感はその辺から来ているのかもしれません。そこで、今回は捕鯨条約の趣旨(前文)と第8条を常識的に解釈し、そこから今回の裁判の争点に関する自分なりの見解を書いてみたいと思います。但し以下は「日本の捕獲調査が現行法である国際捕鯨取締条約照らし合わせて、合法が否か」を考察しようとするもの。「条約はともかく、本来どうあるべきか。」という私見は出来るだけ書かない様に留意したいと思います。

 また、条約(法律)の用語・表現は、概してわかりにくいものになっています。そこで、以下においては、「わかりやすいこと」を第一義とし、言葉の厳密性を敢えて捨象します。加えて、法律というものは、既に社会に存在している行為・現象を後追いで定義して、ルールを定めるものです。従い、その条約の起草された前の歴史、国際捕鯨取締条約は1946年に署名されたものなので、第二次大戦以前の捕鯨史、捕鯨産業の実情への正しい理解が、この条約の解釈上不可欠と思われます。そういった観点も含めて書いてみたいと思います。興味のある方はお付き合い下さい。



(1)国際捕鯨取締条約の前文(趣旨)について
 条約前文には、条約の趣旨(目的)が示されます。この条約の目的は、「鯨類資源の適切な保存を図って捕鯨産業の秩序ある発展を可能にすること」と前文に明記されています。従い、倫理的な理由とか、或いは締約国の世論を理由に、商業捕鯨、言い換えれば「鯨を対象とした漁業」に無条件で反対する態度は既に条約の趣旨から逸脱していることは自明です。条約前文の“whale stocks”(鯨類資源)という表現が印象的です。人類は19世紀までには概ね北半球のセミ・北極・白長須といった製油効率の高い大型の鯨を取り尽くし、20世紀は南極海での乱獲の歴史が続きました。当時の捕鯨産業は、鯨類を「油資源」とみなしていました。現代、油田やガス田の開発に多くの国家・多国籍企業が群がるに似た構造ですね。かかる第二次大戦前の鯨類資源の乱獲への反省から、現行の国際捕鯨取締条約が起草されたというのが妥当な理解と思われます。そう考えれば「鯨類資源の適切な保存を図って捕鯨産業の秩序ある発展を可能にすること」という条約の目的はよく理解出来ますね?また、この条約が過去の乱獲の反省に基づき、「捕鯨産業を殲滅する」ことを目的としたものではないことは明らかですね?

 一方で、「現状では多くの国々が捕鯨に反対しているのだから、条約の趣旨が変わっても仕方ないのでは?」という考え方も一理ありますね。「民主主義の多数決原理」をもって条約の目的を変えることは、論理的に考えておかしいことではなさそうです。しかしこの考え方は条約(国際法)上、妥当な考え方ではありません。条約の修正には、全ての締約国の合意が必要となります。また全会一致で自らが希望する様に条約の修正出来ない場合、締約国はこの条約から脱退することが出来ます。又、同じ考え方を持つ国々を集めて、新しい条約をつくることも可能です。日本はかつてこの条約の目的に賛同して、それを批准した(豪州も同様です)。そして今でも「捕鯨産業の秩序ある発展」という条約の目的に賛同する日本の立場は変わらない。従い、今のままこの条約に留まればいい、という理屈になります。むしろ「捕鯨産業の秩序ある発展」を阻害する意向を有する国々は、条約から脱退するのが筋でしょう。

 尤もそんなことは反捕鯨の国々は重々承知している。しかし、条約の目的に反していても条約に留まって捕鯨に反対し続けないと、折角勝ち取った商業捕鯨の一時停止が解除されてしまう。その故に、条約の目的に反して「捕鯨産業の秩序ある発展」を阻害し、「捕鯨産業の消滅」を意図する反捕鯨国が引き続き条約の執行機関であるIWCに留まり、相対的に多数派を形成し、科学委員会・本会議で論陣を張っている。その結果、IWCでは何が起こっているのか?

「鯨類資源の適切な保存を図る」という点については、捕鯨国も反捕鯨国も同じ立場。しかし「捕鯨産業の秩序ある発展を可能にすること」については、真逆の立場。全く別の真逆の目的を持った人々が参加する会議が生産的なものとなり得るでしょうか?IWC会議に参加した多くの人々が、「あの雰囲気最悪の会議」との印象を口にするのはかかる理由に拠ります。端的に言えば会議場で日本の捕鯨母船とシーシェパードが、物理的な暴力を封印して、言葉を使って戦っている状態。会議には多くの動物愛護団体が参加し、反捕鯨国政府の動向を監視しています。民主的な手続きによって選ばれた議員によって構成される豪州政府は、国内世論への配慮から、捕鯨産業の撲滅する方向で努力することが求められている。豪州政府はそう考えていると思われます。

 近況は知りませんが、かつて「捕鯨産業」を「鯨見物産業(ホエールウオツチング)」に置き換えることを、条約の現代化(modernization)とする議論がありました。でもこれは明らかに現行の捕鯨条約の目的外のこと。それをIWCで議論するのは不適切です。適切に討議するには大幅な条約の変更を要することは自明ですが、全会一致の変更はまずは不可能。だったら、むしろ国際鯨見物取締条約を新たに発足させるのが合理的ですね。

(2)条約第8条について
 これは締約国に科学調査目的での鯨の捕獲を認める条文でして、今回の裁判はこの条文の解釈に関するものです。第8条は4項目から成り、以下簡単に端折ってその意味を羅列してみます。

①全て締約国は科学調査目的で、鯨を捕獲・殺し・処理する権利を有する。
②上記①項の下で捕獲され、殺された鯨体は出来る限り加工(利用)すること。
③上記①項の科学調査によって得られた科学情報の報告義務。
④商業捕鯨においても、生物学的情報を出来る限り収集すること。
 
 ということでして、上記①項の通り、日本は「科学調査目的で、鯨を捕獲・殺し・処理すること権利」を持っています。豪州の主張は「日本の捕獲調査は科学調査ではない、商業捕鯨だ。」というものでして、その理由として、
「鯨肉を販売していること」と
「鯨を殺さなくても科学調査は出来ること」
をあげています。

 前者の理由は、上記②項の記述の通り、「科学調査でも鯨肉の処理(利用)義務がある」ということで、「販売・処理(利用)しているが故に科学調査ではなく、商業捕鯨だ。」という理屈はこの条約の記述と真っ向から対立します。一方で後者の理由ですが、①項には「科学調査目的で鯨を捕獲・殺し・処理していい」と明瞭に書いてある訳でして、豪州の「鯨を殺さなくても科学調査は出来る」とする主張もやはりこの条約の記述と真っ向から対立します。

 加えて、日本が捕獲調査から得たデータはIWCの科学委員会に報告されており、そこではこれらのデータを使って、専門家の間で科学的議論が行われています。近年の南極海の鯨類に関するデータの大半は日本がIWC科学委員会に提出したもの。IWCの科学委員会に蓄積され、学術的に利用されているこれらのデータは科学的なデータではないのでしょうか?(明らかに反捕鯨の立場を取る)専門家も「鯨が絶滅の危機に瀕していること」を主張する為に、日本の提出したデータを使用しています。

 こうして考えていけば、そもそも裁判になるような話ではない、というのが私なりの感想です。やはり条約の記述と明らかに矛盾している豪州政府の主張はおかしい。今回の裁判は、捕鯨産業の撲滅する方向で豪州政府が努力してことを、豪州の国民にアピールする目的で、豪州政府が提訴に踏み切った、という理解が妥当なものと思われます。

 お終いに豪州側の「今回日本の主張が認められれば、日本は絶滅の危機に瀕した鯨も含め、あらゆる鯨を科学調査目的で捕獲出来ることになる」という主張について、この条約が起草された直近、即ち第二次大戦前の捕鯨産業の状況を絡め、書いてみたいと思います。

 確かに条約の内容からすると、豪州政府が懸念している通り、「締約国はあらゆる鯨を科学調査目的で捕獲出来る」と解釈するのが妥当でしょう。当時この条約の締約国は全て捕鯨国でした(豪州も然り。但し米国のみが例外)。鯨は“whale stocks”(鯨類資源)とみなされ、開発(捕獲)の対象でした。その中で当時全く未開発であった鯨類資源(例:南極海のミンク鯨)に関しては、未利用故に資源状態が悪いということは想定されないものの、未利用故にIWCが当該鯨種に関する科学的知見を欠いていたことは当然至極。その場合は科学調査目的で捕獲調査を実施して、科学的知見を集めることが正当なやり方と思われます。またその捕獲調査を実施する捕鯨会社にとっても、これは将来の事業化に向けてその経済性を検討する予備調査として有効であった筈。従い条約第8条の科学調査に関する記述は、「未利用鯨類資源を対象とした予備調査」を想定したものと解釈するのが妥当でしょう。

 一方で今後のこととして、「日本は絶滅の危機に瀕した鯨も科学調査目的で捕獲出来るのか?」という豪州政府の懸念はご尤もと思う。しかし条約上は(法的には)「捕獲出来る」と解釈せざるを得ません。だったらこの条約自体がおかしい訳で、改変を要する、という理屈も成り立ちそうです。しかし、よくよく考えてみれば、当時の捕鯨産業が「絶滅の危機に瀕した」、要するに獲ろうにも数が少なくてほとんど獲れない鯨を主たる捕獲の対象にすることは経済的合理性がない。そういった意味で、この条約が発効した頃においても、「意図的に絶滅の危機に瀕した鯨類が科学調査目的で捕獲されることはあり得なかった」と理解するのが妥当と思われます。

 また、現行の日本の南極海での捕獲調査ですが、資源量と過去の捕獲頭数からするとほとんど未利用な初期資源に近いミンク鯨と、近年資源量が増加しているナガス鯨を若干頭数捕獲しているに過ぎず、捕獲調査の実施が資源に及ぼす影響を十二分に考慮して実施されています。日本が「絶滅の危機に瀕した鯨も科学調査目的で捕獲すること」はたとえ条約上は可能であっても、実際にはあり得ない。日本は捕獲調査の実施にあたり、IWCの科学委員会でも討議内容を重視してきました。そんなことは豪州政府のIWC担当者も重々承知している筈なのですが、まあこれは豪州政府の自国民へのPRの一環。国民の不満を、他国を悪者にして仕立て上げて攻撃することによって、解消する政治手法と理解されます。芳しくありませんね。

 以上、今回の裁判について簡潔に自説を書こうと始めたことですが、結構長いものになってしまいました。TVの「両論併記方式」に飽き足らない人々の参考になれば、幸いです。それでは。

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