外房捕鯨株式会社

千葉県和田浦の捕鯨会社からのプレスリリースです。

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 第6回和田浦くじらゼミ総括        「ちょっとだけよ あんたも好きねえ」

 台風がこの日本列島を東斬し、日本各地の豪雨の報道が目立ちます。先週末の「第6回和田浦くじらゼミ」にご参加いただいた皆様、ご協力いただいた皆様、その後お変わりありませんか?私の方はセミナー終了後上京。七夕の日は東京で終日会議でしたが、また1頭獲れまして今回は夜7時に解体作業開始。約2時間遅刻して解体場到着。尤もそれ以降はご覧の通りの天候でして、捕獲頭数は14頭のままです。残枠は16頭。来週からまた漁が始まります。

 セミナーでは大変お世話になりました。今回は時節柄敢えて「捕鯨裁判」という厄介なテーマを取り上げましたが、捕鯨の仕事やこのセミナーを実施していく中で培った人間関係に大いに助けられ、なかなかいいセミナーが実施出来たものと自負しています。セミナー終了後、下の喫煙場にてKさんの美味しいコーヒーをいただきながら、西脇さんと「もう始めてから6年も経ったか。今回はなかなか洗練(!)されたセミナーだった。それもダンさん・岩崎さんご夫婦の御蔭だね。」と話しました。

 一方でIさんから「もっと勉強して、また東京でやりましょうよ!」という有難いご意見をいただきましたが、、、、ううん、、、、やはりこのセミナーの趣旨は「夏に鯨が揚がる和田浦の風土の中に、少し知的な空間を皆さんのお力添えをいただきながら創造し、その中にどっぷり浸かって愉快に交流すること」。そうですねえ、昔ドリフターズの加藤茶やっていたあれですよ。「ちょっとだけ(痴的じゃない、知的)よ、あんたも(性懲りもなく毎度鯨をばらす仕事なんかを見に来て)好きねえ」という乗りで続けているセミナーなのであります。

 例えば毎夏、遙か中京の半島部から来和し、6回のセミナー皆勤賞のNさんはまさに「あんたも好きねえ」を地で行っています。今回も金曜日に来和され、しっかり解体見学をし、しっかり「じんざ」に泊まりました。「じんざ」のご主人が言うには「Nさんは明らかにマニア、そう、クジラオタクですよ!」と。私にとっても年に一度多くの皆さんのこのセミナーでお会い出来ることが愉しみで、それがセミナー継続の原動力になっていることを実感しています。

 それでは、以下「第6回和田浦くじらゼミ」総括を以下報告させていただきます。皆さん、大変お世話になりました。来年の夏にまたお会いしましょう!



第6回和田浦くじらゼミ総括

 今回のテーマは時節柄「捕鯨裁判」としました。この裁判を巡るプレスの報道は、当初は「日本が負けた。」「鯨は食べられなくなる?」というニュアンスのものが多かった様に感じていました。弊社のお客様からも「もう食べられなくなるんだって?」という反応をいくつかいただいております。従い、今回のセミナーでは3月末に言い渡された国際司法裁判所(ICJ)の判決の内容、そしてその影響を正しく理解することを目的としました。

 一方で今回の裁判のみならず捕鯨問題全般に国際法が関わっています。捕鯨問題は国際問題なので、国際法が関わることは当然なのですが、この国際法というものは我々が共有している社会常識からは相当に乖離した部分がある。昔大学の法学部で国際法を専攻する学生は、よく「私は国際法なんていう浮世離れしたことを学んでおりまして、、、」と自己紹介をしていたものでした。そこで、最初に庄司の方からイントロダクションの形式で、国際法とは概ねどんなものか、捕鯨裁判に関連する諸条約の中で我々の市井の常識からは外れている部分について、簡易に説明をしました。我々日本人は比較的自省する傾向が強く、それは美点ではあるのですが、時に極端に自虐的に物事を捉えることがある。捕鯨裁判の判決を「負けは負け」と割り切るのは簡単だし、潔い態度とも見えるかもしれないが、実際には判決は豪州の訴状を全面的に認めたものではない。IWC日本政府代表の森下さんは、「双方の主張の内容とこの判決内容を冷静に読み比べれば五分五分の結果と理解出来る。」と発言している。尤も当初は判決に驚愕されたことは間違いありませんが、、、

 西脇さんには、今回の裁判の審理の対象がJARPAⅡと呼ばれる南極海での捕獲調査の内容に関することだったので、その内容について説明していただきました。西脇さんはこの調査事業に長年関与され、十数回南極海に行かれた方。やはり実際に現場を熟知する人の言説には迫力がありました。また人類は農業や畜産という食料生産においてさえ、魚を原料とする「フィッシュミール」に全面的に依存している現実を指摘され、海洋資源の調査・管理の重要性を強調されました。
また判決分には「日本の非致死的調査(要するに鯨を殺さない調査)への努力の不足」が指摘されていることにつき、大いに憤慨されていました。資源管理上最も重要なデータ資源量推定値。その推定値の精度を高めるには地道な目視調査の継続が必要不可欠なのだが、それを南極海で継続しているのは日本のみ。IWC科学委員会の科学者はそのデータを使っている。「条約の目的である鯨類資源上、最も重要な非致死的調査は目視調査に他ならない。そんなこともわからないのか?」と。現況では目視調査を実施するに必要な能力を持っているのは日本・ノルウェー・アイスランドのみとの由。目視調査とは、船を事前に決められたトラックライン上を走らせ、船のトップから目視員が実際に見えた鯨の数を種毎に数える、とても地道な作業です。またその目視員の能力は長年捕鯨船にて鯨を捜し続けた経験によって獲得されるもの。その経験が無い人々が船に乗っても簡単に鯨を発見できるものではないのです。象徴的に言えば「捕鯨活動の中止は、鯨の資源管理活動の中止を意味する。」そういうことだと思いました。

 ダン・グッドマンさんは35年に渡るIWCでの資源管理・国際交渉のお仕事、さらにはオランダのハーグでの捕鯨裁判の審理にずっと立ち会ってきた経験から、捕鯨裁判の判決の内容と影響を、その背景を構成する条約の内容も含め、極めてわかりやすく、平易に説明していただきました。奥様の岩崎さんの通訳も的確かつ時にはご夫婦共通の感情の移入が感じられ、素晴らしいものでした。ダンさんのよく整理されたお話が私自身を含めたセミナー参加者の捕鯨裁判の判決内容への理解の促進に大きな貢献をしたものと実感しています。
 さて、ダンさんのお話しをどうやって要約しようか。そうですね、要約などせずに、岩崎さんからいただいた原稿をそのまま掲載することが、最善と判断します。ダンさん、岩崎さん、ご了解下さい。この報告書の最尾部にダンさんの原稿を掲載することとし、その前に残りの報告を書かせていただきます。

 交流会では遙々石垣島から毎年参加されている西野さんに、石垣島のウミガメ漁の画像を見せていただきました。加えて、三橋さんより一昨年のセミナーの「万祝」に関連し、日米の国旗が交差したモントレーアワビ万祝の複製が鴨川の鈴木さんによって製造され、それをモントレーの日本人会に届けたこと、そしてそのセレモニーの画像をご紹介いただきました。こういった参加者のプレゼンは大変貴重なもの。セミナーは自由な感覚で思うことを表出する場です。こういったことを是非継続していきたいと思います。

 翌朝は鯨の解体がなかったので、多くの皆さんは和田浦散歩を愉しみました。但し深夜の2時まで継続された「くじらゼミ夜の部」に参加された皆さんは、相当な鮮度落ちにて、起きられなかった様ですね。それでも9時半よりセミナーを再開。その際に、岩崎さんから「ユネスコの無形文化遺産への和食の登録と、捕鯨文化について」話題提供をいただきました。何でもダンさん・岩崎さんご夫妻が「和食」のユネスコ世界無形文化遺産登録の申請書(最終版)を書かれた由で、それを出発点に自由な形式で質疑を継続しました。岩崎さんはIWCに提出する「日本沿岸の鯨の食文化」に関するペーパーをかなりの本数書いた方なので、それを思い浮かべながら申請書を書いたそうです。尤も庄司がこの「無形文化遺産としての和食」の関係者に近づこうとすると、「海外から観光客の誘致」という意図・利用方法からして、嫌われてしまいそうですね。そんな訳で、まあぼちぼちとやっていこうか、と思います。

 これでは以下にダンさんの原稿を掲載し、以上を以て「第6回和田浦くじらゼミ」の総括とさせていただきます。皆様、ご協力有難うございました。以上




「南極における捕鯨」訴訟(豪対日本、ニュージーランド訴訟参加)における国際司法裁判所(ICJ)による判決:判決の内容は?その意味は? 
ダン・グッドマン

 紹介ありがとうございます。私はダン・グッドマンと申します。現在、財団法人日本鯨類研究所の顧問(カウンセラー)であり、独立行政法人水産総合研究センターの客員研究員を兼務しております。2010年頃から、この訴訟の日本政府の対応のための仕事をしてきました。

ICJは1945年に設立され、国連の主要な司法機関であります。本部はオランダのハーグにあり、その役割は国家間の法律上の紛争を国際法に則って解決すること、また国連機関や専門機関が求める法的な勧告的意見を与えることであります。
ICJでは15人の裁判官が関わり、国連総会と安全保障委員会において選ばれて、9年間の任期でその仕事にあたります。

まず、この判決を理解するうえで重要な、背景として、国際捕鯨取締条約を説明いたします。
国際捕鯨取締条約は3つの部分で成り立っています:1)第一に1946年の条約であり、この条約は11の条項で成り立ち、条約の具体的内容が記されています。2)第二に1956年に合意されました「プロトコール」と呼ばれる国家間の議定書です。これにより1)で述べました条約の修正が行われました。3)そして附表であり、捕鯨にかんする様々な規則がこの附表に記録されます。これらの附表に記されている規定はIWCメンバー国の4分の3の合意があれば変更する事が出来ます。しかし1)で述べた条約は委員会つまりIWCの決定で変更はできません。

今回のICJの判決は、この本条約の中の特に第8条に関わるものであります。この第8条ではメンバー国に対して、科学調査を目的とする捕鯨の特別許可を与える権利を謳っています。この「科学調査を目的とする」という事がICJの判決のキーワードです。

加えまして、オーストラリアの訴状でもICJの判決でも特に附表のパラグラフ10(d),10(e),7(b)が問題となっていますので、これらについても説明します。

パラグラフ10(d)は1979年IWCの4分の3の賛成で採択されましたが、ミンククジラを除く他の鯨類の捕獲に母船を使用する事を禁じる規定です。(いわゆるモラトリアムです。)

パラグラフ10(e)は1982年にIWC4分の3の賛成で採択されました商業捕鯨を禁止する、いわゆるモラトリアムです。モラトリアムは1985年に施行されました。

パラグラフ7(b)は1994年にIWCの4分の3の賛成で採択されました、南氷洋サンクチュアリー(聖域圏)内での商業捕鯨を禁止する規定です。

これらの附表の規定がありますが、しかし条約の8条が「条約内のいずれの規定にかかわらす・・・」という文言で始まる事に注目して頂きたいのです。これは科学調査を目的とした捕鯨は母船の使用に関する規定や商業捕鯨モラトリアム、さらの南氷洋聖域圏の規定には拘束されないという事を意味しています。

さて、これらのバックグラウンドを理解した所で、この裁判と判決についてお話し、最後にこの判決の今後の影響についてお話しいたします。

2010年、豪政府は日本政府に対する訴状をICJに提出しました。その内容は、日本が特別許可の下で行っているJARPAⅡと呼ばれる大規模な調査捕鯨が国際捕鯨取締条約の義務違反に当たるというものです。

1.母船の使用を禁じる国際捕鯨取締条約附表のパラグラフ10(d)における義務違反、さらに商業目的としたクジラの捕殺に関して捕獲枠をゼロとするモラトリアムに関する義務をうたったパラグラフ10(e)における違反。

2.南氷洋保護区におけるザトウクジラとナガスクジラを捕獲対象とする商業捕鯨を禁じるパラグラフ7(b)における義務違反。

2014年3月31日、ICJは判決を下しました。その要点は:
1.JARPAⅡに関わり日本政府が与えている特別許可は、国際捕鯨取締条約第8条の規定に当てはまらない。国際捕鯨取締条約第8条は、締結国が「科学的調査を目的とした」(この文言がカギとなるフレーズであり、後にこの事に言及します)クジラの捕殺に対する特別許可を発行する権利があると記されている。

2.日本はJARPANⅡの中でナガスクジラの捕獲に関して、国際捕鯨取締条約の付表パラグラフ10(e)(このパラグラフでは母船を使う事に関するモラトリアムを指します)に示される義務を遂行してこなかった。

3.日本はJARPANⅡでナガスクジラ、ザトウクジラ、ミンククジラの捕殺の特別許可を与えた事により、国際捕鯨取締条約の附表パラグラフ10(e)に示される義務を遂行してこなかった。

4.日本はJARPANⅡにおいて「南氷洋保護区」におけるナガスクジラの捕殺に関し、国際捕鯨取締条約付表7(b)の義務を遂行してこなかった。

これらの理由から、ICJは日本政府に対して、JARPANⅡに関わる許可・ライセンスを発行しないこと。またこのプログラムに関わる今後の許可を行わないという判決をくだしました。

言い換えると、ICJはJARPANⅡは第8条に明記されている条件を満たしていない。それゆえに母船を用いているという点でモラトリアムに反しているし、モラトリアム一般、さらに南氷洋保護区にも違反していると判断し、調査捕鯨を中止するように命じました。

興味深いのは、ICJがJARPANⅡを広い意味での「科学調査」であるとしつつも(パラ127)、同時にICJは日本政府が与えた特別許可で遂行されているJARPANⅡは「科学的調査の目的」ではないとしている点である。この結論の根拠は、サンプルサイズ(つまり捕獲頭数)の問題であり、それが「科学調査を目的とする」活動として、「客観的合理性」の基準を満たしていないという点にあるのです(パラ224)。

加えて、ICJは捕殺を伴うサンプリングそのものはJARPANⅡの調査目的のためには非合理的ではないと言っていながら、非捕殺的方法の利用に関して十分な考慮がなされていないと述べている(パラ224)。

ICJの判決のベースになっているこれらの2つの点はいずれも科学に関わる問題である。これらの点は法律に関する問題ではなく、少なくとも私が知っている限り、いずれの裁判官も科学に関わる問題に何らかの判断を下す知識や技量、さらに科学調査のおいてサンプルサイズを決めるための統計分析やそこから導き出された結果はIWCの科学委員会の見解とは異なり、同時にJARPANⅡを検証した第三者専門家委員会の見解とも異なっていることであります。ゆえに私個人は裁判官の多数は専門領域を超えた、法律をはるかに超えた判断によって、この判決に至ったと考えています。そのことにより、これも私個人の意見ですが、これらの裁判官は法律のうえで、条約の解釈の上で、深刻な過ちを犯したと言えます。

ICJの判決をさらに詳しく理解するために、裁判官たちの意見は完全に一致していた訳ではなく、その中の4人の裁判官は強い語調の異論を付記していることの注目したいと思います。これらの異論はICJに資料として提出されているIWC科学委員会のレポートの内容十分に考慮して至った異論であります。その例を挙げますと:
―オーストラリアはJARPANⅡが「合理的な」科学調査ではないとする主張を証明していない。
―IWC科学委員会の結論を尊重すると、JARPANⅡの活動が「合理的ではない」と判断するのは困難である。
―JARPANⅡが科学調査としての目的を果たすためには欠陥があるとしても、その事によりJARPANⅡを商業捕鯨とみなす事はできない。
―JARPANⅡの特別許可にたいする合法性を決めるパラメーターは条約そのものにあるのであり、別個の漠然とした判断基準ではない。
―科学調査という広い意味で特徴づけているプログラムを、「科学的目的」ではないと結論付けるのは矛盾である。
―ICJに提出された証拠からは、JARPANⅡの特別許可が科学調査以外を目的として発行されたという結論を導き出せない。

当然のことながら、日本政府はこの判決は誤りであるという立場はとらないのであり、政府代表はこの判決は「残念である」としている。しかし私はこの判決は誤りであると明言し、ICJは政治的判断を下し、その上でそれを正当化する理由を構築したのであると考えている。

ではICJの判決が日本の調査プログラムのどのような影響を与えるのかという点に触れて行きます。2014年4月18日、日本政府農林水産大臣である林ヨシマサ氏は今後の調査プログラムに関する政策に関する声明を発表しています。声明は以下の通りであり、

判決は,国際捕鯨取締条約の目的の一つが,鯨類資源の持続可能
な利用であることを確認しています。これを踏まえ,我が国は,今
後とも関係府省連携の下、国際法及び科学的根拠に基づき,鯨類資
源管理に不可欠な科学的情報を収集するための鯨類捕獲調査を実施
し、商業捕鯨の再開を目指すという基本方針を堅持します

この基本方針に則り、2014年度の調査計画を以下のように予定しています。

(一)南極海においては、判決に従い、第二期南極海鯨類捕獲調査
(JARPAⅡ)を取り止めます。
(二)北西太平洋鯨類捕獲調査においては、第二期北西太平洋鯨類
捕獲調査(JARPNⅡ)について、判決に照らし、調査目的を限定する
などして規模を縮小して実施します。
(三)なお、平成二十七年度の調査計画の策定を踏まえつつ、判決
の趣旨も考慮し、北西太平洋におけるDNAの採取などの非致死的
調査の実行可能性に関する検証の実施など、必要な対応策を講じま
す。
また2015年度の調査に関して、以下のように計画しています。

平成二十七年度以降の南極海及び北西太平洋の鯨類捕獲調査につ
いては、本年秋ごろまでに、判決で示された基準を反映させた新た
な調査計画を国際捕鯨委員会科学委員会へ提出すべく、関係府省連携の下、全力で検討を進めます。 その際、内外の著名な科学者の参
加を得るとともに,国際捕鯨委員会科学委員会のワークショップで
の議論,他の関連する調査との連携等により、国際的に開かれた透
明性の高いプロセスを確保します。
ICJの判決では国際捕鯨取締条約第8条で認められている調査捕鯨の特別許可そのものを否定してはいません。むしろ、判決では締結国が「科学調査の目的」で許可する権利を認めています(パラ55)。つまり、日本政府の今後の政策は、判決に沿っていると言えます。

それではICJの判決が今後のIWCにどのような影響を及ぼすかについて、考えてみたいと思います。

法律上はICJの判決は裁判の当事国にのみ拘束力を持ちます。つまり日本、オーストラリア、ニュージーランドです。現在IWCは88カ国が加盟していますが、85カ国は判決から派生する何の義務も負わないことになります。しかし、疑う余地なく、判決はもうすでにIWCの議論に政治的、外交上の影響を与えています。これは科学委員会にも言えます。例えば、今年の科学委員会では、少なくとも11カ国の科学者がJARPANⅡに関する議題を議事日程から外すべきであると主張しました。これらの科学者の多くは、自国の政府と協議した結果、これらの議題に関わる討論には参加しないと宣言しました。私の感想としては、残念ながら、今後科学委員会がさらに両極化していくだろうし、その影響はIWC年次総会にも及び、今年9月の総会やその後においても、IWCが益々機能不全の状態に陥って行くだろうと思います。

オーストラリアは裁判の中で国際捕鯨取締条約はモラトリアムの採択や非致死的調査を推進する決議文の採択、その他の「保全・コンサーベーション」を目的とする決議がなされるなど、歴史とともに「進化」してきたと主張し、さらにその結果IWCの使命は捕鯨産業の育成からクジラを脅かす捕鯨などからクジラを守ることに変化したと主張しています。しかしICJはこの主張を退け、国際捕鯨取締条約の目的は「クジラ資源の適切な保全を行い、それにより捕鯨産業の健全なる育成を目指す」ことであると確認しています(パラ83)。さらにIWCによる附表の修正や勧告により、条約の目的が変更することはないとしています。

国際捕鯨取締条約の第8条では、締結国が科学的研究のために鯨を捕獲し、殺し、及び処理することための特別許可書を与えることができるとうたっています。ICJ判決で問題になっていたのは(1)締結国が特別許可を与える権利を制限する、(2)致死的調査方法の利用を制限する、(3)特別許可のもとで捕獲されたクジラの利用方法や販売を制限するという点であります。これらの点についてはICJは以下のように判断しています。

第8条の条件を満たす特別許可の下に行われる捕鯨について、商業捕鯨モラトリアムに関する附表、南氷洋保護区での商業捕鯨の禁止する附表、母船に関するモラトリアムに関する附表のもとの義務を負うものではない(パラ55)。

第8条は明確に致死的調査方法を認めていることから、ICJはオーストラリアとニュージーランドは勧告決議(recommendatory resolution)とガイドライン(Guidelines)の法律的重要性を過度に考慮している・・・しかし他の方法が不可能な場合のみ致死的方法をもちいるという条件が出来あがった訳ではない。ICJは致死的調査方法の使用そのものはJARPANⅡの調査目的に照らし合わせると合理性がないとは言えない。

ICJはクジラの販売が行われ、その収益が調査の資金となっているそのことだけでは、特別許可が第8条に違反するとは言えない。

これらのICJの見方は第8条の現在の基本的枠組みやその解釈と一致するのもである。判決を読むと、ICJは第8条の解釈を変更したり制限してはいない。むしろサンプルサイズなどに関する議論を構築して、JARPANⅡの計画や実施は第8条のスコープを超えるものであるという結論に至ったのである。

ICJ判決が取り上げているのはJARPANⅡである。しかしこの判決は捕鯨問題全体に影響をあたえるものであり、IWCにおける基本的な対立に影響を与える。その基本的な対立とは、クジラは他のその海洋生物資源と同様に持続的に利用するべき資源であると考える国と全てのクジラを特別な生物として保護するべきであるという国の対立である。

IWCのメンバー国の間にある、クジラと捕鯨に対する基本的な対立により、IWCは1982年の商業捕鯨のモラトリアム以来、調査捕鯨、捕鯨の管理に関する議論でほとんど絶え間なく緊張し、対立と柔軟性のない意見交換に終始してきた。残念ながら、ICJ判決にはこの状況を変えるような要素は見当たらない。

ご清聴ありがとうございます。

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